ラズパイオーディオ入門

 

yaMPCは、MPD(Music Player Daemon)用のiOSクライアント・アプリ(またはリモコン・アプリ)です。MPDはLinux系/UNIX系のコンピューターなら動かすことができます。例えばUbuntu、AppleのmacOSです。しかしMPDはあまり計算能力を必要としないため、Raspberry Pi(ラズパイ)という名刺サイズの小さなコンピューターでも問題なく動作させることができます。「ラズパイオーディオ入門」ではラズパイを使ってオーディオ・プレイヤーを構築する方法を説明します。ではラズパイオーディオに必要なものを見ていきましょう。

ハードウェア

Raspberry-Pi(ラズパイ)

まずはMPDを動かすコンピューター、Raspberry Piです。この写真は Raspberry Pi 3 Model B+ (3B+)というタイプです。多くのディストリビューション(後述)が 3B+ に対応しています。東京 秋葉原の秋月電子通商、千石電商、若松通商、マルツ、大阪 日本橋のシリコンハウス共立などで買えますが、Amazon.co.jpでも手軽に買えます。

より新しいRaspberry Pi 4 Model Bというモデルもあります。MPDを動かすためにはここまでの性能は不要ですが、3B+に代わりラズパイの主流になりつつあります。


USB DAC

プレイヤーとしてアンプに接続するには、Digital to Analog Converter (DAC) というものが必要です。CDプレイヤーにはDACが内蔵されいますが、ラズパイには別にDACが必要になります。

 

USBで接続するDAC (USB DAC) があれば、ラズパイのUSBポートから接続できます。

 

この写真は TOPPING E30 という中国製 DAC です。USBケーブルでラズパイと接続可能です。E30は背面のDC5Vから給電しますが、信号を送るUSBケーブルからパスパワーで給電するタイプもあります。例えば、TOPPING D10sはバスパワー給電のUSB DACです。一般的にはバスパワー給電より外部給電の方が音質が良いと言われます。


I2S DAC

あるいはラズパイの上に直接DACボードを載せる方法もあります。その場合、GPIOというラズパイの標準バスを使ってラズパイとDACを接続しますが、GPIOのうちI2Sという信号を使って繋ぐので、このようなDACをI2S DACとも呼ぶこともあります。
 ラズパイ用のI2S DACで標準となっているのが Modul 9 GmbHというスイスの会社の HiFiBerry DAC です。世の中にはもっと良い(高い)DACはありますが、最初は標準的なHiFiBerryのDACを使うのがトラブルが少なくて良いでしょう。この写真は、HiFiBerry DAC+ という標準モデルです。より上位のモデルもあります。 


DDC

最近のアンプはデジタル入力が付いているものも多いです。アンプにS/PDIFのデジタル入力が付いている場合は、DACではなく、DDC(Digital to Digital Converter)を使うこともできます。HiFiBerryからも HiFiBerry Digi+ というDDCが販売されています。HiHiBerry Digi+はラズパイからのI2Sの信号を、高精度なクロックを使ってS/PDIFのデジタル信号に変換します。この写真は HiFiBerry Digi+ Proという上位バージョンです。

 

I2S DACやDDCはラズパイほど簡単には入手できません。 HiFiBerry の販売サイトから直接購入するのが比較的安いです。しかし海外のサイトから買うのに慣れていない方、不安な方は、秋葉原のコイズミ無線の店舗または通販で買うことができます。


ケース

ラズパイはケースがなくても動作しますがが、埃とショート防止のためにケースはあった方が良いでしょう。USB DACと接続する場合は、ケースはなんでも良いです。アクリルケースやアルミケースが1000円程度からあります。

 ラズパイの上に直接載せるタイプのDACは、RCAジャックの穴の位置が合うように、DACメーカーの純正品、または推奨のものを買うのが無難でしょう。HiFiBerryの純正ケースは金属のものと、アクリルのものと、プラスチックのユニバーサルケースがあります。アクリルケースはmicroSDカード(後述)を抜き差しし難く、割れやすいのでお勧めしません。金属ケースはmicroSDカードを簡単に抜き差しできますが、ケースを開けてラズパイやDACの抜き差しがしにくいです。この写真はプラスチックのユニバーサルケースです。見栄えはいちばん悪いですが、組み立てやすく、使い勝手も良いです。こちらも HiFiBerry の販売サイトコイズミ無線から購入できます。


microSDカード

ラズパイはmicroSDカードから起動するので、microSDカードが必要です。起動するだけですから、容量は8GBから32GBくらいの間でなんでも良いです。Raspberry Pi 3 Model B+からはUSBメモリからも起動できますが、USBメモリからの起動に対応していないディストリビューション(後述)もあります。


ACアダプタ

ラズパイへの給電に5VのACアダプタが必要になります。Raspberry Pi 3B+は2.5A以上、4Bは3A以上が推奨されていますが、DACを積んで普通にMPDを動かすだけなら2Aあれば十分と思います。Anker PowerPort miniなど5V/12W(2.4A)のACアダプタで十分でしょう。しかし給電ケーブルの抵抗で損失が発生し、ラズパイが頻繁に Under-voltage detected! という警告を出す場合があります。USBケーブルは太め、短め、の抵抗が少ないものを使いましょう。なお 3B+はmicroUSB、4BはUSB-Cで給電します。


USBメモリ(32GB)

音楽ファイルはラズパイを起動するmicroSDに入れることもできますが、PCから新しい音楽ファイルの追加や入れ替えを考えるとUSBメモリに入れてラズパイのUSB端子に刺すのが便利でしょう。その際、USBメモリの容量は、FAT32の上限である32GBにしてください。すべてのラズパイ用のOSはFAT32は読めますが、exFATやmacOS拡張フォーマットはドライバーを追加しないと読めない場合もあります。またLinuxのexFATのドライバーは機能的に不完全です。(現時点の情報です。MicrosoftがオープンソースコミュニティのためにexFATの仕様を公開しましたから、まもなくexFATでも問題なく使えるようになると思います)

 

なお、将来、ラズパイを2台・3台と増やしていく場合は、音楽ファイルはNAS(ネットワークアクセスサーバ)に入れて複数のラズパイで共有するのが便利です。


ラズパイオーディオ構成例

 

ラズパイからアンプまで(スピーカーは省略ます)の典型的な構成を4つ紹介します。

 

1. ラズパイ ー USB DAC ー アンプ

トラブルが少なく、音質が良く、将来の拡張性があるため、初心者に最もお勧めできる構成です。

ラズパイ ー USB DAC ー アンプという構成がお勧めであって、下記のUSB DACとアンプの機種は単なる例です。

悪くはないですが、これらの機種を特に推奨しているわけではありません。

参考価格はTOPPING E30が14,000円程度、TOPAZ AM5が20,000円程度です。(2020年7月時点)

2. ラズパイ ー I2S DAC ー アンプ

ラズパイオーディオ愛好家の間では最も人気のある構成です。コンパクトなプレイヤーを作ることができます。

HiFiBerry DAC+ Proは個人輸入で$39.90+送料、国内価格7,000円程度です。(2020年7月時点)

3. ラズパイ ー I2S DDC ー DAC内蔵アンプ

最近は多くのアンプにDACが内蔵されていますので、アンプ内蔵DACを利用する構成です。アンプまでデジタル信号で伝達されますので、電源のノイズ対策にあまり神経を使わずにすみます。さほどDACの音質にこだわらない方向けです。私自身はリビングもデスクトップも常設オーディオはこの構成にしています。参考価格はYAMAHA A-S301が36,000円程度、Digi+ ProがDAC+ Proと同じ程度です。(2020年7月時点)

4. ラズパイ ー USB DAC内蔵アンプ

USB DAC内蔵の小型デジタルアンプにラズパイを直結すると、もっともシンプルでコンパクトな構成が可能です。

参考価格は、A-U671が40,000円程度です。

Linuxディストリビューション

 

LinuxディストリビューションとはLinuxカーネルとその他のソフトウェアを簡単にインストールして使えるようにまとめた配布形態です。MPDを動かすには、以下の4つが代表的です。

 

Volumio

もともと「RaspyFi」と呼ばれていた、ラズパイ用オーディオディストリビューションの元祖的存在です。

ユーザビリティの観点でいちばん完成度が高い、かつ音質もなかなか良い、万人向け音楽再生用ディストリビューションです。

 

利用者も多く情報を得やすいので初心者にはお勧めです。

操作メニューも日本語版がありますので、安心して使えます。

 

さらに「MyVolumio」というウェブサービス(有料)に登録すると、Volumioのバックアップを行なったり、複数のVolumioプレイヤーをWeb経由でコントロールしたり、CD-ROMドライブを繋いでCDを再生したり、Bluetoothレシーバーとして利用したりできるようになります。

Spotifyへの対応もプラグインの形で実現しています。

 

しかし完成度が高すぎて自己完結しているため再生キューなどは独自の実装をしており、yaMPCのようなMPD Clientからの操作は(少しだけ)注意が必要です。

 

Volumio

 https://volumio.org/


moOde

RuneAudioのコードをベースに改良を重ね、独自のUIを確立したディストリビューションです。Volumioにも似ていましたが、moOde 4以降大きなUIデザイン変更があり、操作性は全く違うものになりました。iPadなどタブレットでの使用を中心に考えたUIのルック&フィールはかなりクオリティが高くなっています。

 

オプションで音質に関する細かい設定ができるので、オーディオマニア向けでしょうか。MoodeAudio Player 3.8まではLinuxカーネルの選択ができるなど、さらにマニアックでした(ライセンスの関係でこの機能は使えなくなっています)が、現在は高音質追求というよりはWebUIなどユーザビリティ向上を追求しているようです。

MPD Clientをはじめ、他のソフトとの相性は比較的良いです。

 

ユーザーフォーラムでの開発チームとユーザーのやり取りも非常に活発で、追いかけるのも大変なくらい、バージョンアップも頻繁におこなわれています。

Linuxカーネルのアップデートへの対応は非常にスピーディなので、常に最新のLinuxカーネルの音を楽しむことができます。

 

moOde

 https://moodeaudio.org/


RuneAudio+R

RuneAudioはRaspyFiと並び、WebUIを持つ音楽再生用ディストリビューションの走りです(上述の通り、moOdeはRuneAudioからの派生プロジェクト)。

Volumio、moOdeがRaspberry Pi標準のRaspberry Pi OSをベースにしたディストリビューションであるのに対し、RuneAudioはArchLinuxをベースにしている点が大きな違いです。

 

軽量、かつ低遅延が特長のArchlinuxを採用することで高音質ディストリビューションを謳っています。早くからカバーアートやアーティスト情報の表示(LastFMから)を実現し、ユーザーからの評価も高かったのですが、ずっとBeta版(最新はBeta0.5)のままで開発はあまり進まず、WebUIはVolumioやmoOdeに完全に遅れをとっている状態でした。

 

ようやく最近になって改良版のRuneAudio+Rが登場、コミュニティも盛り上がりを見せ、活発に開発が進んでいます。最新版はRuneAudio+R e4です(2020年8月現在)。

 もともと定評のあった音質に加えてWebUIも大幅にアップデート、使い勝手も向上しました。しかし、yaMPCでカバーアートを表示するときには若干の設定が必要です。

 

また困ったことに、ユーザーフォーラムのスレッドにしかダウンロードリンクがありません(下にURLを載せました)。

その他Arch系の他のディストリビューションには、Archphile(コロナ禍で開発再開)、Collybia(USB-DACメーカー独自のもの)など、これまたマニアックなディストリビューションが存在します。

 

RuneAudio

 https://www.runeaudio.com/

 

RuneAudio+R 開発スレッド

 https://www.runeaudio.com/forum/runeaudio-r-e4-t7084.html

 


Raspberry Pi OS Lite

ラズパイ標準のLinuxディストリビューションの軽量版ですが、MPDは入っていないので後から追加で入れる必要があります。自分の必要なソフトだけを入れるのに適しています。上級者向け。

 

Raspberry Pi OS
 https://www.raspberrypi.org/downloads/raspberry-pi-os/

 

MPD (Music Player Deamon)

https://www.musicpd.org


 ここではMPD用 Linuxディストリビューションの代表格である Volumioを使ってyaMPCの設定と操作を紹介します。

Volumioのインストールに進んでください。